直線上に配置

主張

【尾崎前市長の対応】
 東大和市は東大和市第6次行政改革大綱(2022(R4)年度〜2026(R8)年度)において「安定した行財政運営の確立」を目的に「事務管理経費の縮減」をあげ、その中ですべての課に対し「需用費、役務費、使用料及び賃借料について、一層の経費縮減を図るため、行政評価及び各年度の予算編成作業等を通じて見直しを行う。」としている。
 この方針はすでに同第5次行政改革大綱(2017(H29)年度〜2021(R3)年度)から示されており、「5次大綱」を受けて、企画財政部行政管理課では(2020(R2)9月30日「庁議付議時事案書」 ※「資料のページ」参照)公民館等の使用料について【主な検討項目及び市の方針】として、「(2)受寄者負担のあり方について」で「施設の設置目的に沿った利用の際の手数料は、集会所、学習等共用施設、公民館の利用者に応分の負担を求める。」と断言。つまり、現在社会教育法第20条の目的以外に使用された場合にのみ徴収している利用料(東大和市立公民館条例第10条)を、全ての公民館利用者に求めるということである。(下線・太字は引用者、以下同じ)
 「(5)実施時期について」では「新型コロナウイルス感染症の市民への影響などを考慮して、今後の状況を見ながら改めて検討することとする。」としています。以上は2020(R2)年9月の同課の庁議内容なので、有料化の方針は庁内でさらに具体化していることも考えられる。
 これらを受けて、東大和市のホームページ(ページ番号1005045  更新日 2022年10月21日)では、「使用料・手数料等の定期的な見直し」について、「令和3年度に見直しの実施を見送った経緯があることから、新型コロナウイルス感染症の状況により変更する場合があることを定め、前倒しすることも可能としている」としている。まさに、新型コロナ感染症が収まりつつある今、事態は切迫していると考えなければならない。

 中央公民館利用者連絡会への尾崎前市長の回答(2022年7月 ※「資料のページ」参照)では、「市の財政的基礎に関わる問題であることなどから、(中略)パブリックコメントを実施する予定はありませんが、実施時期の決定後に現行の「使用料・手数料見直しに係る基本方針」(※「資料のページ」参照)の改定事務を進め、市民の皆様にその内容の公表や説明をしたい」(カッコ・下線は引用者)と述べている。しかし、「実施時期の決定後」の「説明」では、すでに既成事実となってからのものであり、この段階での反対運動は困難です。すなわち、公民館有料化実施時期の決定前に行動を起こす必要がある。
 なお、尾崎前市長が「市の財政的基礎に関わる問題である」としてパブコメ実施の必要性はないと述べているが、その根拠ははなはだ心もとない。
 「東大和市バブリックコメント実施要綱」第3条には「パプリックコメントを実施するもの」として、「(2)条例の制定、改正又は廃止」をあげ、「ア、市の基本的な制度を定める条例 イ、市民等に義務を課し、又は権利を制限することを内容とする条例」を示している。公民館の有料化はまさにこれらア・イのどちらにもにあたる。
 ただし適用除外として第4条において、「( 4 )市税、分担金、使用料及び手数料の徴収その他金銭の徴収に関する場合」をあげている。前市長はこのことをもってパブコメ不実施の根拠としているようであるが、東大和市公民館条例第10条の改定が必要される今般の使用料徴収については、第3条が優先されると考えられる。
 少なくとも、パブコメ不実施となれば第4条2項の規定に基づき、「速やかにその旨及び理由を公表しなければならない」のである。このように第4条「パブコメ除外規定」はあくまでも例外的な規定であると見るべきである。

【和地市長の対応】
 尾崎前市長の後継として立候補し、当選した和地市長も、この方針を踏襲している。
 6月議会にける和地市長の答弁では、「公民館使用料見直しの撤回を表明する候補者を破り当選」したので、公民館等の有料化は支持されたという自己評価をしてる。そして、持続可能な行財政運営の一環として受益者負担の原則に立ち、施設の維持管理に必要となる光熱水費や施設の老朽化に伴う修繕料などの一部について施設利用者に負担をしてもらうと表明している。
 しかしながら、この市長答弁には2つの誤りがある。以下に示す。

@市長選において公民館有料化の是非について論議されたか
 そもそも和地市長候補は公民館有料化推進を公約にしていたか。公約にせずとも自らの政治姿勢として公表していたか。寡聞にして聞いたことがない。選挙戦とはいえ、おのれにとって不利なことを言わず、当選したとたんに対抗馬の言を利用して自らを正当化するなど、実に品のない所業である。
 市長選の候補者は3名おり、公民館有料化について否定的な見解を述べていた蜑コ候補のの他に、「隠れ自公」の和地候補、同じ保守陣営から自民党の根岸候補者が立った。このうち蜑コ候補を除けは、公民館有料化について正面から論争を仕掛けた候補がいたとは聞いていない。公民館問題については触れることなく、鼎立状態で選挙戦は戦われたのである。これを二項対立のごとく言い、公民館の有料化の是非が問われたごとく表現することは、事実の歪曲、虚偽発言と言わねばならない。
 少なくとも市長選では、公民館有料化の是非が問われたとはいえないのである。
 
A受益者負担について
 和地市長は、受益者負担の原則に立ち、行財政運営の一環として施設の光熱水費や修繕料などを施設利用者に負担をしてもらうと言っている。これは適正な表現か。
 「受益者負担」とは広辞苑によれば、「地方公共団体がつくる特別の施設、例えば道路の新設・改良などによって特に利益を受ける人々から徴収すること」とある。公民館のような、市民であれば誰でも平等に使用できる施設の利用者が「特に利益を受ける人々」であろうか。特定の住民だけが利用する引き込み道路の場合と、誰でもが利用できる公民館の利用者の場合では明らかに異なる。これを同列に扱うことは誤りであると言わなければならない。
 上記のごとく、受益者負担を口実にして公民館利用者から利用料を徴収することは論理的に破綻している。市民はすべからく市民税を収めている、その市民からさらに利用料を徴収することは「税の二重取り」と言われても仕方がないかろう。
 市がなすべきことは、財政支出を工夫するなり、積立金を取り崩すなどして、施設の維持管理のための費用をねん出すべきなのである。市財政の健全化を口実にして市民から利用料を徴収することは、本来市が責任をもって維持・管理すべき任務を市民に肩代わりさせることである。

【市場原理の導入】
 さらに見逃してはいけないことがある。市は施設の維持管理のため次のような方針を示している。
 受益者負担の適正化として、前出の企画財政部 行政管理課庁議付議時事案書では、「原価計算について、原価に減価償却費を算出する」としていることである。
 2015(H27)年6月に発行された「使用料・手数料見直しに係る基本方針」(※「資料のページ」参照)の中で、「使用料の原価計算」として、「使用料は、市の施設内の部屋の使用料や市民農園等の使用料がこれにあたります。原価計算にあたっては、施設の維持管理費等の経費を前年度の決算数値に基づき算出します。」とある。具体的には、人権費・需用費(証明書用用紙代)・委託費(保守点検委託)・使用料および賃借料(オンラインやシステムの使用料)・その他(負担金)などを想定している。これを一部とはいえ市民に負担させようというのである。
 これではまるで民間企業ではないか。市の財政運営の確立のために(企業会計を赤字化を回避するために)、市民負担で(消費材の値上げで)対処する。まさに公共財に対する市場原理の導入である。
 公共施設は本来市民の財産であり、これを勝手に売り渡したり、維持管理のために市民にその費用を肩代わりさせることは許されない。市は適正に徴収した税を無駄なく有効に充てることによって、これを維持しなければならない務めがある。
 公民館等の使用料有料化は、まさにその務めに背くものであり、これを是認することは決してできない。
(2023.10.29)


                      HOME