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  住民訴訟 第2回口頭弁論


◆初めに

 ぼくが提出した訴状の内容は、東大和市が代理人弁護士に支払った成功報酬が違法な公金支出に当たるので、当該弁護士に対し損害賠償請求をせよというものです。ここで争点となるのは、成功報酬の支払いが違法であるか否かということです。 原告・被告双方の主張の根拠を極めて簡単に説明すると以下の通りです。
 原告がこれを違法であるとする根拠は、支払いを決定した時点(支払った時点も含め)では、成功報酬の根拠となる経済的利益(東大和市にとって、この訴訟で勝訴することによって得られる、または失われることのなかった利益)が実態として存在していないというものです。支払い日、および支払い決定日においては、最高裁判決が示されておらず、原告・被告のいずれが勝訴するかは不明であった。すなわち、東大和市における経済的利益は存在していないのです。
 成功報酬は勝訴した場合の経済的利益をもとに算出されます。算出元の経済的利益が確定していない段階での成功報酬支払いは違法であり、公金の違法支出に当たる、と原告は主張しているのです。
 これに対し被告は契約書(訴訟事務委託契約書)を交わし、同協議書によって訴訟事務の終了を確認し、成功報酬支払いに同意しているので、公金の出は適法であると反論しています。
 双方の主張を一言でいえば、原告が「経済的利益不存在論」であるのに対し、被告は「契約絶対論」です。
 ここまでが簡単なおさらいです。

◆本日の裁判劇場
 前回の第1回口頭弁論では、いきなり裁判長から「これで結審、判決は……」と言われ驚きましたが、原告には主張することがあり、証拠も提出予定であることを示し、何とか結審はとどめました。今回も裁判長の姿勢は変わっていませんでした。
 原告の提出した準備書面(2)と証拠について確認を取りました。その後、被告に対し原告の準備書面(2)について争うか確認しました。被告は(当然のことながら)争う旨返事しました。
 また、原告が証人申請した尾崎前市長他2名について、被告の意見を聞きました。被告からは「尋問は不要」との回答、その理由を問われた被告は特に何も答えたようには見えませんでした。原告に付け加えることはないかというので、被告から証拠が示されていない以上口頭で尋問するしかないと返答。
 裁判所の判断としては、承認申請は不要、提出された双方の主張と証拠をもとに客観的に違法か適法かを判断するというものでした。
 そして、本日をもって結審、判決は8月28日午後1時20分ということで、お開き。

◆これは裁判と呼べるものではない
 もうこれは裁判と呼べるものではない。原告準備書面(2)に対し、被告が争うと言っているのだから、被告からも主張を展開してもらわねばならない(被告代理人はだんまりでした)。
 被告の提出した証拠は、地裁・高裁の判決文を除けば、地裁と高裁の訴訟事務委託契約書と高裁の同協議書のみ。成功報酬支払いの合法性を示すものとは言えない。「契約書絶対主義」だからこれ以上のものはないというべきか。本来なら、契約書の中身が違法でないことを示すよう裁判長は示すべきであるのにそれをしない。
 提出された証拠と双方の主張のみで「客観的に」違法かどうかを判断するなら、弁論など必要ないではないか。全くふざけるなと言いたい。
 裁判長は、一刻でも早く仕事を終わらせることしか考えていないような官吏のようです。
 この裁判長のやり方を見ていると、すでに結論は出ていると言っていい。その結論は原告にとって決して好ましいものではない。
 これが裁判であるとするなら、裁判は人民の苦情をあきらめさせるシステムというべきでしょう。

◆ダメ押し
 裁判官退廷後、書記官から判決当日出廷しますか、と問われたので、もちろん来ますと答えました。
 とかく「職業弁護士」、あるいは「商業弁護士」は余計な労力をかけない。したがって判決を聞きにわさわざ時間をかけて法廷などには来ない。判決文は送ってもらうだけがジョーシキ。そして、被告も原告もいない法廷で、判決文の棒読みがなされるのでしょう。
 書記官からは「1時20分から判決言い渡しをしますから、傍聴席側から入って待っていてください。当事者入り口は鍵をかけておきます。」……だと!
 第1回口頭弁論の後に出した上申書が、少しは気になっているのか?
(2024.7.17)

第2回口頭弁論は7月17日ですが、原告準備書面(2)を作ったので先に置いておきます。関心のある方はご覧ください。  
 原告準備書面(2)はこちら
(2024.7.14)




   住民訴訟 第1回口頭弁論


◆開廷までのこと

 6月5日、待ちに待った住民訴訟第1回口頭弁論の日。30分ぐらい前に霞が関の裁判所に到着し、5階の法廷近くのの待合室に入りました。そこにはなんと顔見知りの人物がいるではありませんか。原告側の傍聴関係者ではありません。被告・東大和市役所の、いつも文書課会っている職員がいました。しかも全員で4人です。
 初めてのことでした、被告側の傍聴が来ていたのは。代理人弁護士にすべてお任せで、市長が被告席に着くこともなく、傍聴にすら市役所関係者が姿を見せたことは一度もありませんでした。これまでぼくが関わってきた裁判の内、「陳情裁判」では東京地裁立川支部で判決を入れて10回、控訴審で判決を入れて2回(控訴審の判決の時は自身の体調が悪く法廷には出られませんでしたが、市役所関係者の参加者もなかったろうと思います。)、「チラシ裁判」では東京地裁立川支部で判決を入れて6回、控訴審で判決を入れて2回、2つの裁判を合わせて計20回の裁判に一切姿を見せなかった被告東大和市の関係者が参加するなど、どういった風の吹き回しでしょうか。 主に市役所総務部文書課の職員なのでしょう。4名のうち1名は弁護士だと思います。
 ただし、第1回口頭弁論に弁護士が出廷することはめったにありません。それの理由は、民事訴訟法第158条(訴状等の陳述の擬制)に「原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。」という定めがあるからです。つまり、第1回目の口頭意見陳述に限り、訴訟当事者(原告・被告、または代理人)が出廷しないときには、事前に提出した書面類の内容で陳述したものとするということです。 原告であるぼくは必ず出廷していますが、被告側の弁護士来ているとは意外でした。ただし、弁護士に促されて職員が来たのか、職員が傍聴に来るから弁護士も仕方なくやって来たのかは不明です。
 いずれにせよ、そのような事情で待合室に先に来ていた4人とばったり顔を合わせたようなわけです。知っている顔があったのでちょっとあいさつしたのですが、なんだか居心地悪そうにしていて、ついに室外に「退避」してしまいました。まだ開廷まで20分以上あったので、裁判長の名前を確かめようと外に出たら、4人は廊下に立っていました。
 開廷5分前になったので当事者入り口から法廷に入ると、廷内ではなにやらごちゃごちゃとやっている様子。担当の書記官が慌てて、「今判決朗読中なので、外に出て待っていてくれ」というので、とりあえず待合室に戻りました。その時には「またか!」と思いました。「チラシ裁判」における東京地裁立川支部での判決言い渡し後のトラブル(判決言い渡しが済んだあとも裁判官がまだゴニョゴニョ言っているので、こちらが戸惑っていると、早く外で出てくれと担当書記官に強く促されたこと)があったので、高裁の裁判官に苦情を申し立てた事がありました。それで、こりゃあまた申し立てをせゃならんなと思いました。
 開廷5分前になっても当事者が入廷できないなど、あってはなりません。こんな差し出口をすれば裁判官の心証を害するのは百も承知ですが、黙っているわけにはいかない。

◆いよいよ開廷
 初めての行政訴訟、裁判官は3人(参考までに損害賠償請求訴訟である陳情裁判・チラシ裁判では、地裁が1人、高裁で3人の裁判官でした)。被告席には代理人弁護士が2人(後で職員に確かめました)、被告側傍聴(市職員)2人、原告側傍聴ゼロ。立川支部なら気軽に来てくれた原告側傍聴人も霞が関まで出むくのは、いかに当方の裁判に心寄せていただいていても負担が大きい、そのことはよく理解できます。 いっぽう、市役所関係者は出張で来ているのでしょうから、交通費支給です。この段階で力の差は歴然としています。しかも、もし事故があっても労災で保障されます。その原資はすべて市民の収めた税金です。もちろん弁護士費用も、です。なんか複雑な気分ですが、雑念は振り払って入廷しました。
 この裁判長、珍しく名前を名乗りました。「篠田」さん。こちらは事前に確かめてあったけれど、悪い気はしない。しかし、そのこと自体は当たり前と言えば当たり前、他の2人の裁判官が名乗らないことのほうがおかしい。裁判所にはこんな常識さえない輩が多い。 事前に提出してあった書面と証拠について、原告、被告それぞれに確認。ところが、ところが、ところが、「事実関係はこれで確認できたので、判決は……」と判決に至る次の予定をしゃべり始めました。
 「ちっょ、ちょっ、ちょっと待って、なんでそーなるの?!」と心の中で叫びました。地裁立川支部でさえ、短くとも5回は審理をしたのに、即結審かよ! ここは高裁ではないだろーに。
 原告はまだ証拠申出書を提出するつもりもあるし、違法性について追加の主張もするつもりであると申し立て、何とかこの日が結審にならないようにくい止めました。裁判官は不満なようでしたが、これは譲れない。つぎの口頭意見陳述の日を調整し、この日はお開きになりました。
 忙しいんだか何だか知らないけれど、幕開けからこんな調子では、前途多難を予想させる1日でした。

◆けじめとしての上申書
 先にも述べた通り、開廷予定時間5分前になっても入廷できない、しかもその理由がベルトコンベアーのごとき複数の事件の判決言い渡しでした。こんな一般社会の常識とはかけ離れたことを平気でやっている裁判所にたいして、ひとこと言ってやらねば気が済みません。
 第1回口頭弁論が済んで1週間後、裁判所に次のような上申書を提出しました。ほとんど効果はないでしょうが(むしろマイナスかもしれませんが)、黙っていたのでは「裁判所の常識(世間の非常識)」を受け入れたことになってしまいます。
 以下は上申書の一部です。上申書の本文はこちら
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 原告であれ被告であれ、裁判などということは、その生涯においてめったに訪れることではありません。裁判に臨むということはそれだけに重大な決意を要し、不安と緊張を強いられることです。
 さらに、弁護士に代理を委任するとなれば、日常的には考えられないような巨額を必要とします。それに比べれば、本件申立人の場合は本人訴訟のため経済的な負担は軽いという側面はあります。しかし、訴訟にかける時間と労力は並大抵のものではありません。そのような負担を覚悟してまで訴訟に踏み切るのは、いかんとも納得し難い事態に直面したからにほかなりません。
 かくのごとき訴訟に踏み切るにあたって、当事者は裁判所に対し重い信頼と強い期待を抱いています。ところが厳正なる裁判の場で、開廷5分前になっても入廷できない、裁判の最終局である判決言い渡しにおいて当事者を軽視したような方法がとられていると、だれが想像するのでしょう。
 裁判に関わっていることが日常的である司法関係者の方々からすれば、単純な作業は手早く済ませたいという気持ちは理解できます。しかし、「理解できます」というのは、あくまでも「裁判当事者を尊重したうえで」という限りにおいてです。判決言い渡しについて言えば、もしそこに「当事者」がいないのであれば、略式としてこのような判決書の機械的読み上げはあり得るのかもしれません。しかし、裁判当事者が出廷している場合は、裁判は厳格かつ厳粛に行われなければなりません。それが当事者に対する礼儀であり、裁判所の権威を守る砦の石垣であります。
 当事者として関わっている裁判の判決言い渡しが、まるでベルトコンベアーに載せられているかのように淡々と処理されていくという風景は、当事者にとって耐え難いものです。原告か被告のいずれかが出廷している限りにおいては、きちんと裁判官の出廷をもって開廷を宣し、裁判官の退廷をもって閉廷にするという正式な手続きに沿った姿を、当事者としては欲します。
 言わずもがなのことですが、裁判はいったい誰のためにあるのでしょう。正解はもちろん「当事者のため」ということです。誰もが口ではそう答えます。しかし上記のような実態に遭遇した場合、「裁判は裁判所関係者のためにあるのではないか」と感じてしまっても不思議はありません。
 霞が関の「常識」が世間の「非常識」と言われることのないよう、このような実態が早急に改善されるよう望みます。
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(2024.6.8)




   答弁書が届く


 1月に提出した訴状に対し、2ケ月もたって答弁書が届いた。
 代理人は橋本弁護士ではない。利害関係者であるから市役所は別の弁護士に依頼したのであろう。その内容は、毛市役所に基づいての支払いであるから違法ではないの一言に尽きる。
 なお、被告代理人の求めている「原告の請求の趣旨」のうち第2項(市報での謝罪文書掲載と再発防止の具体策執行)は住民訴訟の対象ではないので却下するようにとの内容は確かにその通りであるので、この項に限って取り下げることにした。

※答弁書はこちら

※準備書面(1)と「別紙1」として添付した表(代理人弁護士からの弁護士報酬請求書と、東大和市の支出詳細と、当該訴訟の経緯ならびに両者の契約状況について一覧にしたもの)をアップしておきます。
 「別紙1」は、「住民訴訟提訴」の項に貼り付けた表と内容的にはかなり重複する点もあるのですが、参考までにご覧ください。これを見れば、東大和市の公金支出が適正に行われているか一目で確認できます。
 準備書面(1)はこちら 「別紙1」はこちら
(2024.3.28)




   住民訴訟提訴


 1月22日に東京地裁に訴状を提出しました。東大和市を被告とし、違法に支払った公金(橋本弁護士に支払った成功報酬金)と返還までの利息分を当該弁護士に損害賠償請求するように求める住民訴訟(損害賠償行請求行為請求)です。
 ここにその訴状(一部誤記があったため、訂正済みのもの)をアップしておきます。
 訴状はこちら
 担当する裁判所は東京地裁(霞ヶ関の本庁)になります。行政訴訟となるので立川支部では扱ってくれません。少し遠いですが、関心がある方はぜひ傍聴においでください。

 以下は東大和市が橋本弁護士(東大和市の代理人)と交わした、契約期日、支出期日とその額及び手続に必要な帳票の一覧です。

 

 陳情裁判の確定判決が出る前に市と橋本弁護士は成功報酬の協議書を作成し、その請求書を東大和市に請求書を渡し、市は公金からこれを支出していることがよく分かると思います。
 ※昨日(2024.2.16)にアップした一覧表を差し替えました。一部誤りがあったためと、より分かりやすくするためです。
  この表の塗りつぶし(網掛・色付け)の意味については、各自ご判断下さい。
(2024.2.17)
【報告】
住民訴訟判決言い渡し
 
―不当判決―

【筋違いの暴論】

 
8月28日午後、地裁で「住民訴訟」の判決がありました。結果は残念ながら、しかし予想通りの棄却です。

 判決は被告の主張をそのまま辿ったものですが、更に問題となるような記述が加わっていました。それは、本件住民訴訟を提起する元となった陳情裁判(判決文では「別件訴訟」と呼んでいる。)が最終審である最高裁で「棄却・不受理」となったことにより、代理人弁護士の「成功報酬請求権」は影響を受けず、したがって東大和市には損害・損失が発生していないことになり、原告の請求に理由がないとしている点です(判決文7頁)。
 しかし本件裁判のポイントは、代理人弁護士への成功報酬支払いの時点(確定判決が出ていない段階)に違法性があるということです。したがって東大和市は、公金から支出された成功報酬1,188,000円と支払いが完了するまでの利子分を代理人弁護士に返還請求せよというのが本訴訟の主旨です。
 原告の請求は最高裁で「棄却・不受理」となったのだから、東大和市に損害は発生していないとする判決文の判断は筋違いですし、意図的な原因と結果の「混同」とも言えます(判決文6頁)。川の流れを逆流させるようなこんな暴論が通るならば、この一点だけで東大和当局が犯したすべての違法性が合法化されてしまいます。
 判決の内容は以下の通りです。※全文はこちらからご覧いただけます。

【民法648条の2について】
 
判決文では、東大和市と同市代理人の橋本弁護士が本件訴訟事務に関して委託契約書を交わしていること、控訴審の場合は契約期間が控訴審の終了までになっていること(契約書第2条)、更に橋本弁護士が上告審の訴訟事務を受任していないこと(同弁護士が上告審を受任しなかった理由については、原告準備書面(2)の7〜8頁でその事情を詳しく書いておきましたのでご参照ください。)などを根拠に、最高裁の判決が出る以前の成功報酬支払いであっても違法ではないと断じています(判決文6頁)。
 しかしながら、訴訟事務委託契約期間が控訴審の終了までとなっていること、また、成功報酬について委託事務終了後、委託者と別途協議して定めることと、確定判決後に成功報酬支払いをすることとは何ら矛盾するものではありません(原告準備書面(2)2頁参照)。問題なのは契約書の内容ではなく、2022年11月21日に協議書を締結し成功報酬支払いを合意したことです。
 逆に言えば、東大和市は確定判決を待って成功報酬支払いをしていれば何ら問題はなかったのです。しかし、それ以前の支払い合意は委託契約の「成果」である経済的な利益が確定しておらず、民法第684条の2に違反しています。東大和市はフライングを犯したのであり、この支払は取り戻されなくてはなりません。
 また、判決は「民法648条の2は任意規定であるところ」(判決文6頁)とさりげなく言及していますが、先にも述べたように「成功報酬」として公金から支出する以上、その「成果」である経済的利益の実態は必要条件です。本件の場合、断じて「任意規定」とは言えません。
 民法第648条の2には次のように定められています。
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 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。(下線は筆者)
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 東大和市の成功報酬支払いは、明らかに民法第648条の2違反です。
ところが判決文は、「(控訴審で)市が勝訴したのであるから、本件委託契約に基づき、橋本弁護士の市に対する成功報酬請求権が確定的に発生した」(判決文6頁 カッコ内引用者)などと書いています。しかし控訴審で勝訴したことと、「成功報酬請求権が確定的に発生」とは直結しません。むしろここには論理的な飛躍、というより錯誤があります。また契約期間の終了も成功報酬支払期日とは直接的には結びつきません。代理人弁護士に「成功報酬請求権が確定的に発生した」とすることためには、控訴審での確定判決を得ることが前提となります。しかし実際は上告され、控訴審のそれは確定判決ではなくなりました。この段階での成功報酬支払いの根拠がなくなったことを意味します。

【弁護士報酬規程第5条】
 判決文は、代理人弁護士の弁護士報酬規程の5条にある「最終審」とは当該弁護士が受任している訴訟の最終審(本件の場合控訴審)であるとし(判決文5頁)、これを正当化しています(※「弁護士報酬規程」とは、弁護士事務所や個人弁護士が必ず備えているものです。名称は「規約」「基準」などの場合もあります)。
 橋本弁護士の「弁護士報酬規程の5条」とは次のようなものです。【カッコ内は引用者注】
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  第5条 弁護士報酬は、1件ごとに定めるものとし、裁判上の事件は審級(一審・二審・三審=地裁・高裁・最高裁 ※簡易裁判所は捨象しました。)ごとに、裁判外の事件等は当初依頼を受けた事務の範囲をもって、1件とする。ただし、第3章第1節において、同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときの報酬金については、特に定めのない限り、最終審の報酬金のみを受ける。
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 ここにある「最終審」とは何かということです。裁判長の判断は上記の通りですが、原告はそうではないと考えます。すなわち、当該弁護士が受任している事件の最終審(本件の場合は上告審)というものです。これは最高裁とは限りません。地裁で判決が確定すれば地裁が、もし高裁で判決が確定すれば高裁が最終審というこということです。つまり、確定判決が出たところの裁判所が最終審ということになります。そうでないと成功報酬の算出基準となる経済的な利益の額が(その有無も含めて)判然としないからです。確定判決が出なければ経済的利益の額も算定できないし、経済的利益をもとに算出する成功報酬の額も定まりません。
 判決文のように、高裁での勝訴を根拠として成功報酬を支払うことが許されるなら、最高裁での判決で被告敗訴となった場合はどうするのでしょう。最高裁の判断が出るまでは原告・被告とも勝訴となる可能性は等価です。裁判長は最高裁での原告の勝訴は想定していないということなのでしょうか。そうであるとするならば、司法自らが三審制を否定していることになります。
 判決は、「『最終審』とは、同一弁護士が受任した審級のうちの最終の審級を意味するものと解するのが相当」と言い、「本件成功報酬の支払が本件報酬規程5条に違反するか否かは、当該支払が違法な公金の支出に当たるか否かと直接の関係がない」(いずれも7頁)とまで言っています。とんでもないことです。むしろ逆で、多いに関係があります。判決のように委託契約書に書かれている内容をもとに成功報酬支払いの適法性を主張するならば、弁護士報酬基準についての解釈は密接に関係しています。また民法第648条の2違反との関係でも同様です。弁護士報酬規程5条の解釈は適法・違法の分水嶺とも言えます。


 本件は、東大和市による代理人弁護士への成功報酬支払いが確定判決以前であったことから違法であるとするものであり、それは民法第684条の2違反に当たるというものです。たとえ委任事務契約書に基づいて成功報酬支払を合意する同協議書を締結していても、その違法性が阻却されるものではありません。
 確定判決前の成功報酬支払いは公金の違法支出であるという当方の主張に揺らぎはありません。判決言い渡し当日に、事前に準備してきた控訴状を担当係官に提出してきました。
(2024.8.31)
◆これ以降、住民訴訟の控訴審に関しては「住民訴訟(控訴審)」のページをご覧ください。