自由と人権スケジュール

  【報告】
  東大和市情報公開・個人情報保護審査における意見陳述提

 8月21日午後6時30分から東大和市役所会議棟第4会議室で開かれた東大和市情報公開・個人情報保護審査会(以下、「情報公開審査会」と記す)の意見陳述に出席していたのは以下の面々。情報審査会委員4名(定数5、1名欠席。4名のうち3名は弁護士、1名は「行政経験者」、委員長は渡邉眞一弁護士)他、審査会事務局として総務部文書課職員3名、審査庁として教育委員会職員2名、処分庁として東大和市立中央公民館長、審査請求人としてわたしの12名だったが、処分庁と審査請求人は入れ替えに会議室に入った(同室することはなかった)ので、常時参加者は11名ということになる。
 意見陳述は審査請求人本人からの審査委員名の控えを取りたいという要求から始まった。委員会もさすがにこれは断れない(委員名は市のHPで紹介されている)。しかし誰が参加しているのかは最低限確認しておくべき情報だ。弁護士4名のうち3名、他に「行政経験者」なる人物が1名参加し、審査委員5名中4名が出席で、審査会自体は成立(氏名は割愛する)。審査会の事務局は総務部文書課であり3名が、審査庁である教育委員会からは2名、処分庁である東大和市立中央公民館長が審査請求人のぼくとは入れ替えで出席していた。
 更に請求人からこの会の記録はとるのか、記録は請求人にも配られるのかと質問。審査会事務局の文書課の課長(?)から、非公開なので記録はとらず、配布もしないような発言があったが、公文書として記録はとる必要があるのではないかと聞いたところ、記録はとるが配布はしないと訂正した。続けて、非公開とはいってもそれは審査会のことであって、意見陳述について特段定めはないだろうし、請求人本人以外は参加していないのだから配布してはどうかと重ねて要求しても、審査会の一端としての陳述なのだから非公開とひかない姿勢。
 本人が参加しているのに本人にその記録を見せない、配らない。このおかしさが分かっていない。ほとんど「お笑い」の世界だ。そもそもこのことなのだ、本件の審査請求に至った理由は。本人に関わる情報であるにもかかわらず、墨塗りする。東大和市情報公開条例では個人に関する情報を公開しないことになっている(同条例7条2号、これには「ただし書き」があるが省略。情報公開法では5条1号に当たる)。しかし、同条には 「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とあり、本人に関する情報はこれに含まれないとするのが相当である。
 しかし市はそのようには考えない。情報公開の申請主体について同条例では制限を設けていないことから、本人に関わる情報であっても非公開とするという立場をとっている。つまり「ただし、申請者本人に関わる情報を本人が申請する場合を除く」のような文言がないから非開示だというのである。情報公開法についても、国は同じような立場をとっている。しかしこれはよく考えればおかしなことだ。
 同条例に申請主体について制限を設けていないことが、なぜ本人に関わる情報の非開示に結び付くのか。「申請主体についての記述なし」→「情報非開示」には論理的な飛躍がある。申請主体がその情報に関わる本人である場合、具体的な事例に沿って個別に判断すればよいことである。そのような情報を本人に公開したとしても本人の権利利益の侵害には当たることはない。
 その一方で「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」の条文は視野に入れず、個人情報は一律に非公開とする。国の方針もこの方向に沿っている。
 ひどいものになると、「同号(情報公開法第5条1号)本文該当性を判断するに際しては、プライバシーの侵害の有無を考慮することなく、特定の個人を識別することができるか否かという観点から判断すれば足りるというべきである。」(※カッコ内は引用者 東京地裁民事38部2003年9月16日判決)もあるくらいである。
 最高裁第3小法廷2001年12月18日判決では、@個人情報保護制度が採用されておらず、A情報公開条例に本人開示を認めない規定がなく、B本人開示が個人の権利利益を侵さないのであれば情報の非開示をすることはできないとしている。個人情報保護制度が採用されていれば、同法で情報開示が可能であるという趣旨であろうが、本件のように個人情報そのものではなく、本人に関わる情報の場合、個人情報保護法で開示請求することはできない。なお課題は残るというべきであろう。

 実は、意見陳述では上記のことや、銀行口座番号、印影についての墨塗りについては反論書の中に書いておいたのでこれについては触れなかった。主に情報公開法や個人情報保護法の制定時期についてと、その2つ制定時期の間に言い渡しがあった(処分庁がその正当性を主張する根拠となった)名古屋地裁民事第9部2002年4月24日判決や、東京地裁民事第38部2003年9月16日判決、及び最高裁第3小法廷2001年12月18日判決の相関関係について述べた(下部参照)。
 また、処分庁側の非公開の不統一性についても述べた。これは、10月に公開決定された弁護士からの請求書で事件番号が墨塗りにされていたものが、その4か月前の6月の公開決定された支出命令票、及び歳出伝票一覧表では事件番号も含めすべて公開されていたという事実である。行政のこのような一貫性のなさは、その恣意性を疑わさせるものであり許されない。
 意見陳述終了後、質問はないかと聞いたが誰も手をあげなかった。本当に聴いていたんだろうか。メモを取る姿も見られなかった。ぼくの話し方もうまくなかったという自覚はあるが、そんなものかもしれないとも納得した。

 

(2004.8.22)





   反論書を提出

 3ヶ月待たされた処分庁(中央公民館)からの弁明書に対し、本日(4月15日)反論書を書いて提出した。
 反論書が届いてから1ヶ月以内(提出期限はなんと2週間目の3月29日となっていたため、これを不服として提出期限を審査庁(教育委員会)に延ばさせた。)と審査庁に要請し、1ヶ月という期限を自らにも課してきた。その結果本日提出に至った。
 反論書はこちらから見ていただくことができる。
 この後は処分庁(中央公民館)からの再弁明書が出る可能性もあり、もしなければ口頭意見陳述(審査著には開催を希望する旨伝えてある。)に進むことも考えられる。
 
もし意見陳述の機会があればぜひ大勢の傍聴をお願いしたい。意見陳述は市役所内で開かれるはずなので、そのさいには連絡します。
(2024.4.15)



 


   行政不服審査請求と情報公開法の下での審査請求

 昨年の12月19日付で提出した行政不服審査請求であったが、処分庁(東大和市中央公民館)の求めに応じて補正をした。その段階からすでに行き違いがあったようで、当方は行政不服審査法に基づく審査請求と思い込んでいたが、処分庁側は情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)の下での審査請求として扱っていたことが今回の問い合わせで明らかになった。
 調べてみると、情報公開法第18条1項に「開示決定等又は開示請求に係る不作為に係る審査請求については、行政不服審査法(中略)項の規定は、適用しない。」(カッコ内引用者)とあるとおり、当該法の中での審査請求となるようだ。ただし、内容的には「審理員」ではなく「審査庁」であり、「行政不服審査会」ではなく「情報公開・個人情報保護審査会」であり、口頭意見陳述は定められていない
が、ないわけではない。「情報公開事務の手引」という東大和市が作った冊子には記載がある。という違いはある(同法第18条2項)。これを見る限り行政不服審査と比較して見劣りがするという印象は否めない。
 とはいえこの方向で進むしかないのであれば、与えられた条件で最善を尽くすしかない。

 なお、弁明書の内容は次のとおりである。※こちらから弁明書は参照できる。
 @事件番号 A振込先 B印影について弁明書では次のように主張している。
 @Aについては特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することによるものを含む)であり、Bは犯罪予防、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐れがあるというものである。
 @については名古屋地裁判決(平成14年10月30日)を根拠として本人情報であろうと原則として不開示という立場をとり、Aについては東京地裁判判決(平成15年9月16日)を根拠に弁護士事務所の銀行振込先を「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるもの」として不開示にしたとしている。
 Bについては争ってはいないが、印影の開示が犯罪等に結びつく可能性があるとするのは過剰反応に過ぎない。このようなことを認めていたら、全ての個人的な情報は犯罪に結びつく可能性を理由として開示されなくなってしまうのではないか。

 本人情報の不開示については不当な名古屋地裁判決が出ているが、本人に関する情報は個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)でも開示も訂正も認められている(第33条・34条)のであるから、それに違背する判決には疑念が生じる。
 また、弁護士事務所の銀行振込先の不開示を適法とした東京地裁の判決は「テロ対策特措法に基づく自衛隊部隊の活動実績について」に関して言い渡されたものであり、これを準用することには適当ではない。
 等々、検討すべき点は多々ある。
(2024.3.25)





   東大和市の行政不服審査請求は改善されたか?

 昨年の12月に東大和市に提出していた審査請求に対する弁明書が届いた。
 東大和市を被告とする裁判費用のうち、当市が代理人である橋本勇弁護士に支払った費用の詳細につき情報を得るために公開請求し、一部不開示となった審査請求に関するものである。
 具体的には@裁判所における事件番号がマスキングされている(これたと何のための弁護士費用であるかが特定できない)、A振込先の銀行名・口座名・口座番号と推測される部分がすべてマスキングされている(このことで実務上の不都合ないが、銀行名・口座名までマスキングするのは過剰であり、情報公開の趣旨に反する)ことを不服として審査請求したのがその内容である。
 審査請求したのが昨年の12月19日、弁明書実際に当方に届いたのが今年3月18日だった。そのうえで、反論書の提出期限は3月29日であるという。あきれてものが言えない。開いた口が塞がらないとはまさにこのことである。
 (1)弁明書の提出に3ヶ月もかけ(「不作為」にも相当する期間である)ておいて、反論書は2週間で提出せよとは均等・平等ではない。
 (2)しかも教育委員会総務課長名で送達されている。本来であれば審理員(審査請求を第一義的に進める者。審査庁(行政庁)が指名)から通知されるべきものである。
 上記(1)(2)の件について同委員会総務課の担当者に問い合わせた。
 (1)の反論書提出期限については検討していらためて連絡するとのことであった。
 (2)の送付者については、当該課長斎藤健二郎氏が審理員であるという。
 審理員が指名されたときには審査請求人(わたし)に通知しなければならないことになっている(行政不服審査法第9条)にもかかわらずそれをしていない。しかも、教育委員会総務部と言えば利害関係者そのものではないか。これにも疑義がある。

 書類提出期限にせよ、行政不服審査請求にせよ、東大和市はかくのごとく対応が成っていない。先のチラシ配置拒否裁判の判決を受けて行政不服審査についても「適切な運用に努め」るはずではなかったのか(和地東大和市長2023.7.28「要請書に対する回答について」)。この件で見る限り、東大和市長は実質的になにもしていなかったことが分かる。
 同市長は、損害賠償金を一方的に供託しておいて、交渉中であった再発防止と謝罪についてはほっかぶりしたままである。
(2024.3.22)





  監査請求には期待できず、住民訴訟を提訴の方向で

 前2本の住民監査請求に次いで、12月19日に陳情裁判の弁護士費用が不当に高額であることを理由に改めて提出しました、その結果が2024年1月15日に届きました。公金支出からすでに1年を経過していることを理由に却下です。
以下から監査請求とその結果が見られます。
   12.19監査請求はこちら  1.15監査請求結果はこちら
 全部で3本の監査請求結果は、当初予想していた通りすべて棄却(陳情裁判の高裁成功報酬支払期日に関するもの・チラシ裁判の着手金と成功報酬額の妥当性に関するもの)か却下(陳情裁判の着手金に関するもの・チラシ裁判の地裁着手金に関するもの)です。
 これらを一覧にして以下のように、それぞれの評価についても含めまとめてみました(PDF版はこちらからダウンロードできます)。
  
 地方自治法第242条の2に「監査委員の監査の結果(中略)に不服があるとき(中略)同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。」とある通り、
審査結果の通知から30日以内に住民訴訟を提起できることになっており、現在その方向で検討しているところです。

 以降の成り行きについては、「住民監査請求・住民訴訟」としてページを改め報告することにします。
(2024.1.23)



6月1日の高裁判決確定から1か月以上過ぎるも、以下に見られるとおり、被告市側の誠意ある対応は見られせん。
 この裁判の意義や、市側の対応の現状などをお伝えするため、「裁判ごっこNEWS」を発行しました。
 トップページからご覧ください。




   住民監査請求の監査結果

 「チラシ拒否裁判の弁護士報酬支払について」と「陳情不上程裁判の弁護士報酬支払について」の監査結果が届きました(12月25日付け)。いったんコメント抜きで掲載しておきます(内容は「第2 監査の実施」以降に限定し、それ以前については割愛しました)。
 これを行政訴訟に持ち込むか否かは現時点では確定していません。
 ◆チラシ拒否裁判の弁護士報酬支払についての監査結果はこちら
 ◆陳情不上程裁判の弁護士報酬支払についての監査結果はこちら

(2024.1.3)




   住民監査請求の申請
 
 ―弁護士報酬は適正な支払いか―

1、チラシ拒否裁判の弁護士報酬支払について
 「弁護士報酬の不可解」にも書いたが、チラシ配置拒否事件の5.17高裁判決に対し、1,069,200円(税こみ ※以下同じ)の報奨金を東大和市が支払っていることがどうにも納得できない。損害賠償額が10万円から1万円に減額されたとはいえ、行政手続法第7条違反が認定されたことは、行政の存立基盤を揺るがす事態である。さらに国家賠償法第1条1項による原告に対する損害賠償が要求されたことは、(賠償額が10万円から1万円に減額されたとはいえ、)実質的敗訴である。
 しかるにこの訴訟を受任した橋本弁護士は厚顔にも高額な報酬金(いわゆる「成功報酬」)を請求し、東大和市はこれを平然と支払っている。いかに当該弁護士と契約を締結しているとしても、市民感情からは到底納得できない支払いである。
 適正な額を算出してみたところ、着手金・日当・報酬金を含めて(消費税込みで)合計895,840円となる。これは、着手金を多めに算定した額である(詳しい算定方法は監査請求書を見てほしい)。しかるに東大和市は総額2,816,000円を支払っている。この差額の1,920,160円は不当な公金の支出というべきである。
 契約に基づく支払なので、橋本弁護士に返還を求めることは困難かもしれないが、それができないならば、管理者である東大和市長が補填すべき金額である。

2、陳情不上程裁判の弁護士報酬支払について
 弁護士報酬に関しては、さらにもう一点違法性を疑われる事案がある。
 陳情裁判に係る橋本弁護士からの報奨金支払い請求に応じて、東大和市は、1,188,000円を2023年1月6日付で支払ってる。ところが、当該裁判の確定判決(最高裁判断)が出たのは2023年8月4日である。確定判決が出る前に成功報酬を支払うなどあってはならないことである。
 すなわち、1,188,000円及び2023年1月6日から返還が実現するまでの年5分の割合の利子分にあたる公金が違法に失われたことになる。東大和市長は違法に支払った上記金額を橋本弁護士に直ちに返還請求しなければならない。
 上記内容の住民監査請求を本日付で提出した。詳しくはそちらを見ていただきたい。

※住民監査請求書については以下を参照のこと。
 ◆チラシ拒否裁判の弁護士報酬に関しての監査請求書こちら
 ◆陳情不上程裁判の弁護士報酬に関しての監査請求書⇒こちら
(2023.11.6)





   弁護士報酬の不可解

 チラシ配置拒否事件判決に関して、東大和市の顧問契約をしている橋本勇(東京平河法律事務所)から市に対し、今年の10月に報酬金の支払い請求があったという情報を得た。
 行政として行政手続法違反が指摘され、損害賠償額が1/10に減額されたとはいえ、国家賠償法による賠償が命じられた判決に対し成功報酬を支払うとはどうしても納得できない。それとも、民事訴訟ではこのようなことが当たり前なのか。
支払日についても疑念がある。

 これとは別件裁判(陳情不上程告発裁判)だが、橋本勇弁護士から1,188,000円(税こみ ※以下同じ)の報奨金の請求がきている。しかし、この裁判の確定判決は最高裁の判断が出た本年8月4日、これも不可解である。

 ちなみに、東大和市を被告とした上記とは別件裁判(生活保護費支給に関わる振込項目名義記載についての裁判 担当:生活福祉課)の支払いが2020.年4月3日に着手金10,000円12月28日に日当55,000円と報酬金22,000円(税込み)と成功報酬22,000円が同が、日になされている(金額が低いのは簡易裁判だからか?)が支払われている。
 この時間差はいったい何なのか。疑問は尽きない。
(2023.10.15)





   きみは見たか? NHKスペシャル「“冤罪”の深層 〜警視庁公安部で何が」
      
―チラシ配置事件高裁確定判決後の東大和市の対応を重ね合わせて―


 冤罪事件である大川原化工機事件について、独自取材を敢行したNHKが「“冤罪”の深層 〜警視庁公安部で何が〜」というタイトルで9月24日に報じた。これをご覧になった方も多いと思う。ぼくはこの番組を、東大和市の佐伯中央公民館長が行ったチラシ配置に絡む違法行為、及びその後の東大和市の対応について重ね合わせながら観ていた。

【事件の概要と背景】
 この事件に関してはすでに『世界 2022年3月号』(岩波書店)で青木理が「町工場VS公安警察 ルポ大河原化工機事件」として伝えている(こちらもぜひ読んでほしい)。
 大河原化工機は、横浜市にある従業員90人ほどの中小企業であり、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を製造している。この製品が軍事転用可能な(デュアルユースの性能を持つ)精密機器であるとして、この会社に不正輸出の疑いがかけられ、2020年3月11日に社長以下3名の役員が警視庁公安部に逮捕された。そして2020年3月31日、東京地検は役員3名を外国為替及び外国貿易法違反の事実で起訴した。一年近い不当な長期拘留の後、2021年2月5日に釈放されたが、逮捕された役員1名が適正な治療を受けられず、拘留中に胃がんで亡くなるという悲惨な事件も起きている。
 公判前整理手続によって、2021年7月15日に第1回公判期日が開かれた。しかし、弁護側からの証拠開示請求を受け、開示するためとして第1回公判期日は8月3日に延期されることとなった。ところが証拠開示期限の直前、7月30日に東京地検は公訴の取り下げを申し立て、裁判を終結させたのである。
 2021年9月8日、逮捕された役員2名と遺族は東京地裁に、国と都を被告とした損害賠償請求を求めて提訴した。
 以上がこの事件の概要である。

【冤罪の背景や原因】
 この冤罪事件には様々な原因や背景があるが、先にそのいくつかを指摘しておきたい。
  (1)容疑を認めるまで拘留を続ける、「人実司法」といわれる悪弊
  (2)肥大化した公安警察の組織防衛と過剰な国家主義的使命感
  (3)組織に属する個人の利益と保身
  (4)経済安保法に象徴される「戦時経済体制」の蔓延
 これらが幾重にも絡み合って今回の冤罪事件が起き、唐突に終息したといえよう。

【異例の証言】
 損害賠償請求裁判では、捜査を担当したZ・Yという現職警察官の法廷における証言が注目された(注1)。それは、上層部の関与もほのめかしながら、事件は捏造であり、個人的利益や保身から生じたとするものだった。証言によりこの件が冤罪であったことが明らかになった。このような証言自体異例であり、法廷では驚きをもって迎えられたようである。しかし同時に、ぼくは次のような疑問をいだいてしまう。
 現職警察官の証言であることを考慮すると、すでに公安内部ではこの証言は了解済みのことだったのではないか。公安部では冤罪を認めることにより、より大きな真実を隠蔽しているのではないかとかの疑念である。
 つまり、冤罪の責任を第五係・外事第一課・公安部まででとどめ、さらなる上層部(国務大臣・内閣総理大臣など政治権力に属する部分)による事件関与にふたをするための法廷戦術だったのではないかとも考えられるし、もしくは経済安保法制そのものへの批判につながらないようにするための防御策ではないかという考えも成り立つ。すなわちこれは本来政治的な事件なのではないかという疑いである。
 小ウソを明らかにして大ウソを隠す類は世間でもよく見られるが、権力を持ったもののそれは格段に罪深い。
 (注1)2018年の木原元官房副長官(当時)の妻に関する疑惑でも、実名による元捜査員の告発があった。

【内部告発者の手紙と取材】

 NHKの取材では、捜査関係者からの匿名の内部告発と謝罪の手紙も紹介されている。この手紙は社長たちの起訴後の拘留中に届いた。手紙の主は、法廷でこの事件は捏造であると証言した元捜査員のZ・Yとは異なるが、その内容は証言とも一致するものであると番組では紹介している。大川原化工機の社長はこの手紙を読み、「人間って、上から言われたことをするだけじゃないんだな」と得心している。
 NHKはこの匿名の告発者(仮にQとしておこう)を特定し、直接取材をしている。その中でQは次のように述べる。
 「上層部がそろって応援し、令状もある。そこで違うと言い出すには勇気がいる」「やりそうな人材は組織にはまだまだいる」
 Z・Yの証言と一致する部分もあるが、微妙に異なる部分も見られる。Z・Yが、個人的な利益優先と保身から冤罪に加担したと判断しているのに対し、Qは上層部の強い意向のもと冤罪と分かっていても異論をさしはさめず、結果的に手を貸すことになったと判断している。「上層部がそろって応援する」ためには、それなりの力が働いたのではないかとみるのは考え過ぎだろうか。
 最後にQは次のように語る。「非を認め、決裁した人それぞれに責任を取らせる。それができないなら、また同じような事件が起きるだろう」
 起訴後、外事第一課 第五係の係長は警部から警視に昇進している。
 大川原工業の役員と遺族がおこした損害賠償請求訴訟の判決は、12月27日に言い渡される予定である。

【チラシ配置事件と重ね合わせて】
 チラシ配置拒否事件は判決でも指摘されている通り、行政手続法第7条違反にあたり、表現の自由の侵害にあたるとして国家賠償法1条1項に基づき被告東大和市に対して損害賠償を命じている。
 被告である東大和市にとって判決内容はきわめて重いものである。しかるに東大和市の対応はこれに真摯に向き合っているとは思われず、原告に対する謝罪すら実現していない。
 これまでも東大和市では、行政幹部やそれに働きかけができる者たちから表現の自由に関わる介入が見られた。この判決を契機に表現の自由を確固としたものにすべく、原告は様々なアクションを市や議会に対して行ってきた。しかしながら市も市議会も一蓮托生、後ろ向きの姿勢である。
 チラシ配置拒否事件は、本件冤罪事件と比べれば取るに足らないものかもしれないが、いくつかの点で重なる部分がある。そのいくつかを以下に列挙してみたい。

・東大和市当局に内部告発者はあったかといえば、残念ながらその兆候は見られなかった。しかし、心ある職員は必ずいる。大川原化工機の社長のことば、「人間って、上から言われたことをするだけじゃないんだな」を期待したい。
・大川原化工機事件の原因の一つと考えられる「組織に属する個人の保身」で言えば、行政不服審査における口頭意見陳述での佐伯元中央公民館長の虚偽答弁「修正をお願いした」などはこれにあたるだろう。これを認めた審査庁(尾崎元市長)や、これに連なる伊野宮元審理員及び館長の上司である小俣元社会教育部長(当時)も同罪といわねばならない。
 判決を受けて、東大和市が再検証すべき事柄であるにもかかわらず、判決後、和地市長が何らかの対応をしたということは聞こえてこない。
・捜査員Qのことば「非を認め、決裁した人それぞれに責任を取らせる。それができないなら、また同じような事件が起きるだろう」は胸を突く。
 和地東大和市長は実質的に「非を認め」たとは言いえない。非を認めることは「決裁した人」(この中には行政不服審査における決裁も当然含まれる)、つまり市長自身も責任を取る必要がある。そもそも、佐伯元中央公民館長の適正な処分さえ行っていないのである(さすがに公安部 外事第一課 第五係の係長のように、昇進まではしていないだろうが、これも現市長の元にあってはどうなるか分からない)。
 これらの処分に合わせて公表まで進まない限り、「また同じような事件が起きるだろう」ということにはリアリティーがある。

 東大和市における表現の自由を確固たるものにするための働きかけはまだまだ途上である。
(2023.9.29)





   市議会は市当局と同じ穴のムジナである

 先にも報告したが、9月14日の総務委員会について、より詳しく分析してみたい。
 まず
この委員会で一度も発言しなかった議員がいることを明らかにする。
 
蜂須賀議員(自民党)・東口議員(公明党)の2人である。しかし、採決では反対に回った。どのような根拠で本請願を不採択にしたのか明らかにせぬまま反対に回る。請願者を含む市民に対して不誠実であり、議員としての資質に欠けるというほかない。

 反対に回った他の議員はどうであったか。賛成してくれた議員を含め報告する。
 質疑の段階では、中間議員(公明)が市の考えについて質問をし、意見を表明した。上林議員(共産)・高峰議員(維新)中野議員(やまとみどり)からも、市当局に対し質問と、意見表明があった。
 自由討議では大后議員が長々と判決文を読み上げ(この人はいつもこのパターンだ。)、第三者のように解説を述べ、最後は「総合的に判断して賛同するには至りませんでした」と結んでいる。大后議員の発言から読み取れることは一つ。「判決文にないことを市は履行する義務はない」という、市および請願に反対する議員の主張と同一である。自己の言葉で語れず、既存の文章や他者の主張に乗っかるしかないから、反対する独自の根拠が提示できないのだろう。
※大后議員の発言はこちらで聞けます。
 同じ自由討議で、上林議員と高峰議員が、「一部敗訴」などという評価は本判決の根幹ではないと正しい指摘をして市を批判したのに対し、中間議員は「市が判決文のとおり対応していくということなので請願を採択する必要はない」と言い切っている。なんという言い草であろうか。
判決文で命じられたこと以外(謝罪・処分・公表を)市が対応しないので、請願が提出されているのだ。
 さらに中間議員は、「表現の自由は最大限に尊重されなければならないが、認められないこともある」との言わずもがなのことを付け加えていた。問題なのは、表現の自由が侵された事実である。チラシの配置が認められたために、過去に何か問題があったのか、今そのような問題があるというのか。本件のような事案に対し、このような仮説を立てる必要がどこにあろう。
 自公政権を批判するようなチラシ類が変更や撤去を求めれた事例は過去に何件もあるが、興味本位で個人のプライバシーを暴いたり、ヘイトに及んだり、差別を助長するような表現物があったということは(幸いにも)聞いたことはない。中間議員の発言は、タメに(しかもオノレのタメに)する発言というべきである。
 以上が総務委員会でのドキュメントである。

 本日(9月25日)の本会議に移ろう。
 結果から報告する(個人の目視による確認なので、誤りを排除できないことを初めにお断りしておく)。
 【賛成】7
  共産党(2 ※1名欠席)・やまとみどり(3)・高峰議員(維新)・関議員(生活者ネット)
 【反対】13
  自民(2)・自民新政会(3)・公明(4)・立憲国民クラブ(3)・大川議員(無所属)

 賛成は1/2、圧倒的少数である。この中で(とりわけ総務委員会で)立国の犯した罪は重い。大いに反省、考え直してしてもらいたいところである。
 本会議での本請願についての発言にも触れておく。上林議員は請願に賛成の立場から討論に参加した。中間議員は総務委員会での発言趣旨のとおり、「市は判決文にあることを履行すればそれでよい」との内容で賛成討論に立った。まさに同じ穴のムジナの親分である。
 木下議員(自民新政会)・蜂須賀議員(自民)も反対討論に立ったが、本請願についての発言はなかった。採決の結果を読んで、もはや発言する必要を認めなかったのか、
反対する理由が中間議員を代表とする「判決文至上主義」
であり、たんなる繰り返しになるからやめたのか、それはわからない。すでに何度も述べたように「判決文至上主義」を主張することは、本請願の趣旨を正しく読み取れておらず、判決文さえまともに読み取れているかどうかも疑問である。請願で主張していたことは、表現の自由を確固としたものにするために何を為すべきなのか。市は、議会は、そして自分はということであり、判決はそのスタートに過ぎない。
 しかし実際は、市も議会も、そんなことは一寸も考慮していないことが改めて明らかになった。ただし議員全員が同じ穴のムジナではないことを示すため、議員の個人名をあげて、ここに詳述した次第である。また、市役所すべての職員が市長と一蓮托生というわけでもないことも事実であろう。
 請願が不採択になったからといって、当方の主張を引っ込めるという気はさらさらない。今後も市長に謝罪・処分・公表を迫っていくことは同じであるし、こちらから公表せざるを得なくなるような働きかけも必要である。

 以下はある人に送信したメールの一部である。
 「人は条理に基づいて行動すべきもので、判決や法律はその最低線を示したものに過ぎません。その意味で言うと、市長の対応は情けない限りです。」
(2023.9.25)





   9.14総務委員会の報告

 総務委員会の午前中の審査は本請願の他に以下の4つの陳情が審議された。
 @「健康保険証の存続を求める陳情」(東京保険医協会)
 A「改正マイナンバー法を見直し、健康保険証の存続を求める意見書」を政府に送付することを求める陳情(東京土建一般労働組合村山大和支部)
 B「消費税インボイス制度の実施について再考を求める意見書」を政府に送付することを求める陳情(同上)
 C指定管理者関係条例の違法条項の改正を求める陳情

 いづれも重要な陳情だったが、午前中の審議時間の約半分を本請願の審議に費やしたことは、本件が請願であることに加え、議員の関心が高い(とりわけ市の対応に関し)案件であったと評価できる。ただその関心がどちら(批判的か迎合的)かで対応が分かれた。いずれにせよ、そのため市側の答弁からも彼らなりの理屈と混乱が見て取れることができた。

 はじめに尾崎利一紹介議による請願の説明があり、あわせて請願者からの以下の意見表明があったことが伝えられた。
 「市長はこのような請願が提出されることを恥だと思わねばならない。司法から違法性を指摘され、損害賠償を命じられたにもかかわらず、謝罪さえせず、関係者についてはお構いなしとは、違法性そのものを認めてはいないということに他ならない。行政のトップの態度として嘆かわしいことだ。」

 以下、請願人として気になったことを2点ほど上げておきたい。
 「二審で一部敗訴」という点に関して市側の論拠は賠償金が(1)10万円から1万円に減額されたこと、(2)訴訟費用が1/10が被告の負担となった(一審では訴訟費用は原告負担)ことをあげていた。(松本副市長はこれに加えて地裁で勝訴、高裁で一部敗訴との趣旨を述べ、総務部長からたしなめられていた。)
 しかし、これはおかしい。(1)について被告の側から言うならば、「根幹では敗訴ではあるが一部勝訴の部分もある」(原告から言えば「勝訴であるが一部敗訴の部分もある」)であろうし、(2)は被告の側から言えば「敗訴の一部」(原告の側からは「勝訴の一部」と言いえなくもない)である。
 
つまり「一部敗訴」と言えるのは原告のみであって、判決の根幹である行政手続法違反が指摘され、損害賠償が命じられた被告・東大和市にとっては基本的に敗訴であり、(1)を取り上げて「一部勝訴」と言えなくもないが、「一部敗訴」はあり得ない。これを「一部敗訴」など強弁し、全体的には勝訴しているようなイメージを振りまくことは、意図的な事実の歪曲である。
 あるいはまた、このように解釈することもできなくはない。すなわち(1)と(2)を比べ、(1)は勝訴だが、(2)は敗訴なので「一部敗訴」と表現した。
 しかし、判決の根幹において敗訴は決定的なのだから、こんな些末な部分のみ取り上げて「一部敗訴」ということ自体がそもそも間違っている。これは苦し紛れの言い訳でしかない。

※民事訴訟法第64条に「一部敗訴」という語句は用いられている。
 「一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は、裁判所が、その裁量で定める。ただし、事情により、当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができる。」
 これは同法第61条「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。」を受けてのものと解釈できるが、このことをもって、市側は「一部敗訴」と主張しているのではないかとも推察できる。しかし、形式的にそう主張することはあり得ても、行政行為が違法と断罪され、そのことによる損害賠償が命じられていることを考えれば、本件判決を実質的に「一部敗訴」とすることには無理があろう。

 謝罪、処分、事実の公表(市は、処分に変えて「指導」といい、二審判決を真摯に受け止め「公民館の適切な運営につとめる」と言い逃れる。)これを行わない根拠として、原告が訴えたのは損害賠償のみであって、判決も謝罪と公表まで求めていないということをあげている。つまり「判決に書かれていないことは一切やらなくていいのだ」と言っているに等しい。
 しかし本請願で求めていることは、東大和市が違法処分を行い、損害を一般市民に与えた加害者であるということであり、
加害者が被害者に謝罪するのは当然のこと、その当然のことを求めているに過ぎない。本請願を不採択にした議員や、役人たちは親に教えてもらわなかったのか、間違ったことをしたら「ごめんなさい」と謝ることを。
 しかも本件は表現の自由に関わる重大な事態である。
 なるほど、その故にこそ本請願を不採択にする理由があったのだろう。役人にとっては些細なことと見せかけて、何もなかったことにしたい。
 不採択議員は役人の意向に迎合したという意味でかなり罪深い。
中でも立憲国民クラブの大后治雄議員は許せない振る舞いをした。不採択に回った理由が理解できないだけでなく、もし大后議員が賛成していれば採択に持ち込めたのだ。

 結論が最後になってしまったが、採決の結果は以下のとおり。
  
【賛成】上林議員(共産)・中野議員(やまとみどり)・高峰議員(維新)
  
【反対】中間議員(公明)・東口議員(公明)・蜂須賀議員(自民)・大后議員(立憲国民)


 傍聴には立川市の市民グループの方が来てくれたが、残念ながら地元は私のみ。ネット中継で見ていてくれたと信じたいが、やはりリアル参加が望ましい。
 あとは東京土建の関係者らしき人が3名ほど見られた。

 
会議の予定は定例会:9月25日(月)、再度傍聴を求めたい。

(2023.9.14)




   東大和市議会に請願を提出

 「裁判ごっこNEWS」は6月の定例会に向けた陳情に応じてくださった議員・会派の方々にすべてに送付しています。
 5.17判決を受けて、和地市長がこれにまともに対応することもなく、原告との面談も拒否するという異常な事態のなか、9月議会に向けて請願を提出することにし、当該議員に請願の紹介議員になっていただくようお願いしていました(「『裁判ごっこNEWS 5号』以降」参照)。その結果、共産党議員団を代表して尾崎利一議員がこれに応じてくださいました。

  

 双方で文案を調整の結果、請願の内容は上記掲示のようなものとなりました(画像クリックすると拡大され、ダウンロードできます
)。
 【今後の予定】
 ★総務委員会:9月14日(木)9時30分
 ★定例会:9月25日(月)

(2023.8.31)





   コスタリカ大使のメッセージ発表に関して

 高裁逆転勝利判決に取り組んでいる最中、コスタリカ共和国駐日大使アレクサンダー・サラス・アラヤ氏が東大和市民に宛てた平和のメッセージ発表に関してのトラブルが、行政当局と「サンホセの会」の間で発生した。これは、東大和の市民グループである同会が数年がかりで取り組んできた、平和市民のつどいに大使の臨席を依頼する活動の一端として取り組まれたものである。
 東大和市は大使のについて市が要請したものではないという偏狭な理由から、当初はこのメッセージを掲示のみで済ませる方針であった。都知事のメッセージはステージに掲示し、全文を朗読するという対応に比して、大使のメッセージの扱いはあまりにも無礼であるとし、サンホセの会では再考するよう求め続けていた。
 8月18日、サンホセの会代表と「つどい」の実質的な運営主体である東大和市教育委員会の岩野生涯学習課長・小俣教育部長・松本新副市長と会談が行われ、以下の内容で合意がなされた。
  @大使のメッセージを市として訳したもがあるので、その日本語訳を読み上げる。
  Aサンホセの会で日本語訳したものは、原文と共に会場で展示する。
 日本語訳であればだれが訳しても同じであろうと認識のもと、この線で確認しあった。

 しかし、当日午後松本副市長から電話があった。大使館の都合で市で訳したものの確認が取れないので、サンホセの会で訳した日本語のものを要約して発表したいという申し出だった。
 メッセージの全文読み上げで合意したのだから、大使館から了解が取れないのであれば、こちらで訳したものを全文読み上げるべきと反論。そもそもなぜ市の訳文なら読み上げ、当方の訳文が読み上げられないのかと問いただしたが、まともな回答は帰ってこず、結局物別れとなってしまい、電話は交渉はまたしても暗礁に乗り上げ、強引に市側の方針で進めることとなった。サンホセの会としてはあくまでも非合意のまま。

 核兵器廃止条約のくだりが問題になったのであろうという、ある方からの指摘もあった。聞いた当初はそんな馬鹿なと思っしたが、よくよく考えると納得できなくもない。いや、むしろそう考える方が18日の副市長の対応が理解しやすいのである。
 現政権の方針に近似している現市長は、核兵器禁止条約をすすめ、非武装を維持して軍事費を民生に活かしているというコスタリカ大使のメッセージはそのまま伝えたくないのだろう。市の訳ならば、また当方の訳文の要旨だけならば、そのあたりはぼかすことも可能だと考えた結果とみられる。
 まさに本件は、政治的な意思を押し通さんとする当局側からの攻撃であり、表現の自由に関わる問題でもあるという認識が必要である。

 大使のメッセージを市が日本語訳したものの確認は必須だと考え、提示を岩野課長に要請した。しかし。大使館に確認できていないものは提示できない(松本談)とのこと。この文章を入手できれば、ことの真実が分かるはずである。

※この件に関しては、ある意味、表現の自由とも直截的に関わりのある問題であり、別ページ(「コスタリカ大使メッセージをめぐって」)を設けて報告し続けたい。コスタリカ大使メッセージをめぐってこちら





   「裁判ごっこNEWS 5号」以降

 和地新市長の高裁判決に対するこの間の対応は、この事案を表現の自由に関わる深刻な問題としては受け止めず、むしろ軽微な問題として印象付けようとさえしているありさまである。このようなことでは、行政の窓口において政治的(政権や行政当局にとって都合悪いと判断された)情報の発表が妨害される恐れがある。
 本年5月の判決を受けて、市当局もそのような対応は控えているようにみえる(これが唯一の、逆転勝訴を受けての直性的な効果といえる)が、「のど元過ぎれば」なんとやらで、表現の自由の侵害に及ぶ介入行為がいずれ再発するであろうことは目に見えている。
 それは、当局幹部連中からの直接的な指金であったり、議員や経済的なボスなど、市政に影響力を持つ者たちからの口出しが切っ掛けとなって始まる。同じことが繰り返されると真面目に業務にたずさわっている職員ですら(「だからこそ」か?)は面倒を避けたがり、自主的に市民に規制をかけるようになる。これがいわゆる「忖度」という自主規制だ。
 この方向に進まないようにするには(今回の事態を受けて言えば)、違法行為をしたことを公的に被害者へ謝罪し、違法行為の関係者を適正に処分し、これら事実を市民に公表することが必要であり、最も効果のある再発防止策になる。ところが、和地新市長は、これらの対処を一切スルーしようと、後ろ向きの姿勢を崩していない。判決では求められていないことはする義務がないと考えているようです。しかしこれらは、法律的な義務や判決命令に基づくものではない。社会的な常識、規範にその根拠がある。市長は自身や身内の保身のために、このことを分かろうとしていないといえる。

 表現自由の侵害に関わる事案の再発防止を確実なものとするため、上記のような認識のもと、下記掲載の請願を作成し、紹介議員になってくれるようほぼすべての議員に依頼した(依頼が受けられなければ、これを陳情として提出する)。以下はその請願文と、依頼のメールに付した拙文である。

  

 
以下、添付文章(前後略)
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 5月17日、東京高裁判決は、東大和市の行政上の違法行為を認定し、原告に対し精神的な損害を与えたと認め、被告東大和市に対し国家賠償法上の損害賠償を命じたものであり、被告東大和市にとって極めて重大な事態であるという認識が必要です。
 しかるに、先の市長答弁を見る限り、そのように認識しているとは到底思えない発言が見られました。このままだと原告に対する謝罪もなく、再発防止策などなく、いつの間にやら元の木阿弥という結果にならないとも限りません。平気で表現の自由を侵すような行政パーソンの再発生です。
 再発防止に一番効果があるのは、公的な謝罪と、関係者の処分、そして事実の公表です。これらのことが真剣に取り組まれて、二度と同じ過ちを犯さない体制が確固たるものになります。

 以上の認識をもとに請願書を作成しました。
 この内容に賛同していただけるようでしたら、ぜひ請願紹介議員になっていただきたいと思います。
 ---------------------------------------------------------------------------------
(2023.8.21)





   市長回答などへの通告

 東大和市長から、当方の要請書や請願に対する(期限遅れの)回答や、賠償金支払いに関する依頼文が複数送られてきている。
 こちらの態度を明らかにするため、以下の文書を提出した。
  
(2023.8.21)




   8.13東大和市議へのメール

 東大和市議会議員(面談陳情に応じてくれた会派・議員)に「裁判ごっこNEWS 4号」(トップページからご覧ください)を送り、あわせて次のメッセージを書き送った。
 -----------------------------------------------------------------------
〈前略
 先の6月15日の市長答弁、更にそれをコピペしたような16日の矢吹総務部長の答弁にに見られるとおり、東大和市は違法なチラシ配置拒否、および書き換え強要について全く反省をしているようには見られません。15日の市長答弁、「適切な運営に一層努めてまいります」では、「これまでも適正な運営に努めてきた」というニュアンスが込められています。その結果がチラシ配置拒否なのですから、これからも同様の事案が発生することは目に見えています。
 「一部敗訴」という発言も問題です。判決全体の根本的本質(議要請の違法が認定され、損害賠償が命じられたということ)を見ようとせず、本件事案と判決内容を軽微なものに見せかけようとしていることは明らかです。まさに「一部事実」のみによって、事件全体をグレーに見せかけようとしているといえます。
 市長は口先だけ「適正な運営」を言うのみで、再発防止の具体策は一切表明していません。最も効果的な再発防止策は、被害者に対する謝罪と、違法行為に関係したも者の適正な処分、そして一連の事実の公表です。市長は市報での公表すら「市報につきましては(中略)、市民の皆さまに広くお知らせする必要がある情報を掲載することを原則としている」(請願書に対する期限遅れの回答より)としてこれを拒否しています。表現の自由に関わるチラシ配置拒否事件の顛末こそ、市民に最も伝えるべきことではないでしょうか。
〈後略

(2023.8.13)





   7.6請願書に対する、東大和市長からの(期限遅れの)回答など

 7月6日付の当方の請願書(要請書)に対する回答が、回答期日(7月22日)を過ぎて28日付で送られてきた。
 7.28回答はこちら

 東大和市議会議員に送ったメールにも書いたように、東大和市報への掲載を拒否している一方、再発防止に対する具体的な内容はほぼ無いと言ってよい。「引き続き、…指導」「引き続き…適切な運用」のみである。

 いっぽうで、賠償金支払いへの協力要請は6月30日、7月6日に引き続き8月8日付で都合3回(うち2回は計算書・請求書・口座登録依頼書付き、1回は文書のみ)が送られてきている。
 これでは順序が逆であろう。まず謝罪したのちにこのような依頼をすべきであるということは、担当者である伊藤中央公民館長にすでに伝えてある。
(2023.8.13





   東大和市議へのメール

 
東大和市議に宛てて、「裁判ごっこNEWS 2号」を送付するとともに、次のように書き送った。
 -----------------------------------------------------------------------
〈前略〉
 すでにお伝えしました通り、本年5月17日の東京高裁判決で被告東大和市は行政手続法違反、損害賠償責任が認定され、6月1日には確定判決となりました。しかるに、東大和市長の対応ははかばかしいものではありません。
 先の議会答弁を見る限り、これを軽微なものとして受け止め、責任を問回避しようとしていることは明らかです。
 「一部敗訴」という発言に見られるとおり、敗訴という自覚すらなく、判決の重大性を認識しているとはとても思えません。
 このような後ろ向きの認識が、原告に面談し謝罪するという、まず行われなければないことが履行されていない原因です。
 いっぽうで、損害賠償金の支払いのための協力(請求書の提出)を原告に求めてくるという、倒錯した行為を繰り返しています。

 行政が違法行為を行ったということを、市長はもっと深刻に受け止めなくてはなりません。
 答弁では「この判決を真摯に受け止め、公民館の適切な運営に一層努めてまいります」とは述べていますが、違法行為に対する反省や、被害者への謝罪の言葉は一つもなく、まして再発防止策に関する言及もありません。
 このようなことでは、今後同様な違法行為が発生することは目に見えています。

 真に再発防止に取り組む気があるのならば、違法行為をした者(の管理者である市長)の処分、そしてその事実を市民・職員へ公表することが不可欠です。すなわち、謝罪・処分・公表というプロセスが履行されない限り、行政の正常化は達成されません。

 原告から市長に、これまで数度面談を求めてまいりましたがこれに対する反応はなく、市長は面談の意思もないことを確認(7月11日、加藤秘書広報課長に口頭で確認)し、以降こちらから面談を求めることはせず、市長が当方に赴くよう要請いたしまた。ここまでこじれてしまったのは、ひとえに市長の責任です。
 他市の例(9条俳句)や事業者が司法に損害賠償を命じられた事例を見るまでもなく、敗訴した側はまずは謝罪し、しかる後に再発防止策をとるというのが常道です。東大和市長はこのような当たり前の対応さえできていない、そのことがまず問題にされなければなりません。
〈後略〉
 
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(2023.7.20)




   東大和市議会議員との面談陳情と市長の対応


 東大和市議会第2回定例会(6月13日〜6月30日)に合わせ、市議会各会派、他無所属議員に東京高裁判決確定に関し面談を求め、陳情を行った(議会に対し陳情書の提出はしていない)。その内容は以下のようなものである。
 市当局の謝罪と判決内容のすみやかな実施、関係当事者の処分と再発防止策の策定、これら一連の処理について市民・市職員、および市議会での報告である。すなわち、謝罪→処分→公表という対処よってこそ再発防止が確実となる。この件は、適正な市政運営といった意味で与野党問わず議会がチェックすべき課題である。そうあってほしいと願わずにはいられない。
 陳情した以上、あとは市議会での対応については各議員に任せるしかない。チラシ拒否裁判高裁判決について6月議会(第2回定例会)では、限られた議員のみの発言にとどまったが、次の定例会でさらなる追求を期待したい。

 いっぽう、これに対し市長の対応はあいまいなままである。6月15日、市長所信表明に対する日本共産党の尾崎利一議員による代表質問に答えた和地市長の答弁(「和地市長の問題発言」参照)は内容的に不正確であるばかりでなく、虚偽の事実に誘導する意図が感じられるものであった。これと瓜二つの発言が、6月16日、やまとみどりの中野志乃夫議員の一般質問に対する矢吹総務部長の発言にも見られた(そのやり取りはこちらから見ることができる)。

 以下に和地市長の答弁を再現する。
 「中央公民館チラシ配置にかかる損害賠償請求事件にかかる弁護士費用等についてでありますが、現在までの支払金額は140万8000円であります。次に(中略)再発防止についてでありますが、本件裁判につきましては、一審で市側勝訴、二審で市側一部(口頭では明らかに強調していた)敗訴となり、裁判所でさえ判断が分かれる事案でありました。この判決を真摯に受け止め、公民館の適切な運営に一層努めてまいります。」(カッコ内は引用者。市長の答弁はこちらで聞くことができる。)
 判決の内容を明らかに歪曲して表現している。繰り返しになるが、確定判決は東京高裁の二審のものである。一審で勝訴したことはすでに問題外である。さらに二審で一部敗訴と言っているが、行政手続法第7条違反が認定され、国家賠償法第1条1項により損害賠償が命じられていてどこが「一部敗訴」なのだ。全面敗訴と言ってもいいくらいである。このような認識であるとすれば、「真摯に受け止め」も「適切な運営」もあてにはならない。
 そもそも、市長も総務部長も判決そのものを読んでいないのではないか。もし読んでいるならこんな発言はなしえない。顧問弁護士の橋本勇氏に入れ知恵されたか、苦し紛れの虚勢を張っているかどちらかであろう。

 本来であれば、被害者に会い謝罪するというのが世の常識である。しかるに市長は、部下の違法行為によって被害を受けた者が求めている面談に応じようとせず、1万円払って早急に事態を終息させようとしている。これはとんでもない間違いである。
 再発防止に真剣に取り組む意思が市長にあるのなら、被害者にまず謝罪、しかる後に賠償の速やかな実施、そして違法行為を行ったものの処分と指導(あわせて、その任命権者の自己処分)、さらに東大和市民、市職員、議会での一連の事実の報告というステップを踏んでこそ本当の再発防止につながると認識せねばらない。ところがこの間の市長の対応を見ていると、部下の過ちは自己の責任として引き受ける矜次と自覚がないと受け取られることばかりである。

この間の市長の対応は以下のとおりである。
  @ 6月8日付 要請書(回答期限6月20日)→回答(6月21日付)伊藤智中央公民館長より手渡される。
  A 6月22日 要請書(再送)(回答期限6月27日)→回答(7月6日)伊藤中央公民館長よりメール添付
  B 〈6月30日付「請求書および登録依頼書の提出について(お願い)」が伊藤中央公民館長より郵送される。
    ※以下7月6日付同内容の郵便が伊藤中央公民館長より届く。
  C 7月6日 要請書(請願書)(回答期限7月22日)
  ※以上要請書は、すべて秘書広報課窓口に持参。

以下は、Aの東大和市立中央公民館長伊藤智氏からのメールに対する当方の返信である。
-----------------------------------------------
東大和市立中央公民館館長
伊藤智さま

いつもお世話になります。

回答に関して以下のように考えます。
要請書の期日も無視し、掲題も付けず、押印もないものを公文書としては認められません。
そもそも、要請書の眼目は市長との面談であり、そのことに一句の言及もありません。
まずは会って謝罪することが先決であり、それが世の常識であり、市長がなすべきことです。
これまで当方は市役所まで出向いて面談を求めてきましたが、これより先は市長自ら当方に赴かねばなりません。(原文は

本日市長に提出した要請書(請願)を添付します。

自由と人権
榎本清
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【おまけ】
 東大和市議会議員に対する面談陳情の結果は以下のとおり。

   
 今回は一人の議員を除いて全ての会派が当方の要請に応じてくれた。政治的意見の違いはあるとしても、まずは会って話すことの重要性を改めて認識した。その意味でハナから面談を拒絶した者の議員たる資格を問いたいし、再考を求めたい。
 ちなみに、会派所属の議員が全て立ち会ってくれたのは、立憲国民クラブ・やまとみどり・日本共産党東大和市議団・自由民主党(以上、面談順)であった。
(2023.7.6)





   市長への面談要請、その後


 本年6月1日の高裁判決確定によって、裁判所から行政行上の違法を指摘され、国家賠償法による損害賠償を命じれた東大和市長は、本来であればその被害者である原告に面談し、謝罪したうえ、再発防止策等について述べるべきなのであるが、事態は全く逆の状態になっている。
 判決確定1週間後の6月8日、原告である当方から市長に対し、面談を要求する要請書を提出した。これに対し秘書課から電話で、多忙を理由に会えないとの連絡があったのみ。姿を見かけたときに声をかけたが、忙しいとして対応すらなされなかった。
 市長が多忙であることは承知しているが、裁判のこと、しかも敗訴裁判の被告の立場に関することである。早急に対応すべきこととは考えないのだろうか。
 要請書への回答は無視しておいて、中央公民館長経由で別文書(「6月30日付「請求書および登録依頼書の提出について(お願い)」)が届いた。支払いに対する協力依頼である。市長としてなすべきことの順序が逆ではないか。その意を込めて、再度「要請書(再送)」を出した。回答期限は6月27日である。
(2023.6.23)





【初めに】
 チラシ配置拒否裁判の逆転勝訴判決が出たのが5月17日、6月1日には被告市側が上告を断念したので、高裁判決が確定しました。
 その後市長との面談を求め、今後の対応について聞こうとしたのですが、秘書課からの電話連絡(多忙で会えない)以外応答はなく、回答期限をかなり過ぎてから、回答方法に沿わない形で、しかも市長自身ではない部署から依頼文書を渡されました。
 このような市長の不誠実な対応では、謝罪や再発防止策もあてにはならないと判断し、また広く市民の方に知っていただきたく、このサイトを立ち上げました。
 この件に対する市長の対応ついて、また、市議会がこれにどう対処したのかをその都度お伝えすることにします。

      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   和地市長の問題発言

 6月15日(木)の東大和市議会 市長所信表明に対する代表質問を、一部だがネット中継で見た。初めは聞き間違えかと思ったほどだ。だから1週間後にその録画を市議会中継の録画で見直した。しかし、聞き間違えなどではなかった。
 ※市長発言はこちらから見られます(問題発言は最後のほうです)。
  市長は、日本共産党の尾崎利一議員の関する質問に答える形で、次のように述べたのだ(結論から言えば、これでは先が思いやられるというしかない)。
  @裁判の結果は、一審で勝訴、二審で一部敗訴
  A裁判所でさえ判断は分かれた事案
  B弁護士等への支払金額は現在までのところ140万8千円
  Cこの判決を真摯に受け止め、公民館の適切な運営に努める
 Cは当然のこととして、@〜Bについては疑問が残る。以下項目ごとに述べる。
 @東京高裁の判決は、一部不十分な面はあるにしろ、大方は原告の主張を取り入れたものである。東大和市にとって「一部敗訴」どころではない、市にとって得点ポイントがあるとすれば、訴訟費用の負担割合ぐらいのもので、ほぼ敗訴と言ってもいいくらいだ。
A判断が分かれたのは地裁と高裁の判決内容で、法的には上位の高裁判決が優先されるのは当然で、だから逆転勝訴(市にとっては「逆転敗訴」)なのだ。
 「裁判所の判断が分かれる」という場合は、同一事件について地域ごとの(例えば東京と大阪の地裁)判決が異なる場合を言う。市長は無知からこんなことを口にしたのか、意図的な発言かはわからないが、不適当な発言であることは明らかである。
 B弁護士に代理人契約をした場合、着手金だけで50万円は軽く超える。これに文書手数料・日当・報酬金・実費・交通費等がかかる。それに年間顧問契約料が加わるとすればこの額で収まるのか疑問である。そもそも140万円としても、決して無視できない金額である。市財政がひっ迫していると主張しながら、こんなムダ金をかけてまで市民と争う市長の姿勢こそ問われねばならない。
(2023.6.23)